ラトコのコンゲナあかりでアメリカのバクダンが釣れるもんだら、陸軍大将だもの、山奥さ電気ならべてバクダン釣るもんだ。アメリカはソンゲナ手にかからんさ。機械文明らからネ」
「キサマは主人のうちが焼ければいゝと思っているな」
「ハア、忠義らがネ。ミヤコの代りに焼ければいゝもんだ。戦争になれば、自分のウチも主人のウチもないもんだ。兵隊は自分のイノチもないもんだがネ。オメサマも兵隊に行って性根直すといゝもんだ」
「キサマ、オレが戦死すればいゝと思っているな」
「ハア、戦死せば忠義なもんだ。ヤスクニ神社の神様らがネ。オメサマみたいな慾タカリのイクジナシれも神様にしてくれるもんだ。神様になれるろうかネ。オメサマ、敵のタマが尻ッペタから前の方へぬけたもんでは、恥なもんだガネ」
「キサマ、主人を慾タカリのイクジナシと言ったな」
「言うたもんだ。ホンキのことらば、仕方がないもんだ」
こんな山奥の地区でも都市とひとまとめに時々空襲警報もでる。空襲警報になると正一郎は国民服にゲートルをまいて、カメの首すじつかんで叩き起す。カメもナッパ服の古物を一着もっているから、それを着せてキャハンをはかせる。首筋をつかん
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