を住宅向きにフシンしたけりゃ自分の金でやれという。幸蔵は文なしだから、土蔵の中で動物園の動物程度の生活をしている。
 この幸蔵が貞吉の生還を喜ばないのである。貞吉というヤッカイ者が一人ふえると益々自分たちが邪魔にされるというらしい様子だが、貞吉にはそれが阿呆らしくて仕方がない。動物園の動物以上に虐待の仕様もないではないか。
 けれども、貞吉をいっぱし邪魔物にヤッカイな奴めという風に扱う。それは正一郎が貞吉の生還をウルサガリ、ヤッカイ者に扱うから、それにウマを合わせて正一郎の御機嫌をとり結ぶという様子でもあり、それはお世辞を使ったって一文のタシにもならないのだが、シシとして、たゆまず貞吉を咒い邪魔がっているのである。
 異母妹は衣子と云った。五ツ違いであるが、これが又、御多分にもれず当家のヤッカイ者の一人なのである。
 十九のとき結婚した。男は土豪の次男坊で、東京で銀行員をしていたが、二人の生活は幸福ではなく、その原因は衣子の我がまゝにあったという話である。男はマジメ一方の秀才であったそうだが、衣子は亭主と打ちとけず、姑とは仲が悪く、昼は外出して映画を見たり遊び歩いていたそうで、男の子が
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