もつき従っており、これがみんな栄養失調の気味で、やたらに食い倒す。もちろん別々の配給生活にして、大根一本やらないけれども、同じ屋根の下にいるから、子供たちは、こっちの物を盗み食いする。野良犬、野良猫と変りはない。それを人間の子供のように待遇するのは、まことに不快な問題である。
 住む家はなくとも甲斐性ある引揚者は戦災学校の窓のないコンクリートにむしろを敷いて雄々しくやっているではないか。それだけの甲斐性もないオヤジの子供だから、盗みをする。どうせ盗癖のある子なら、大阪にはスリの学校というのがあるそうだから、そこで修業させて、親を養わせるがよい。
 正一郎という立派に経済科出身の学士が、誇張じゃなしに、こういう思いきったことを言う。シャイロックぐらいに思いきって徹すると、愛嬌のあるところもあり、モヤのかゝったところがないせいか、不潔でないような受けいれ方ができる。
 とうとう幸蔵親子七人を土蔵へ閉じこめてしまった。土蔵も二つあるが、幸蔵の住宅になった方は破れて使い物にならなくなった方で、石ウスだの一斗釜だのという置き場にこまる邪魔物の外は置いてない。畳も敷いてないところへ追いやって、内部
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