会ひには来てくれるなと伝へてくれと言ふのだよ」
 長平は朦朧と目をつむり、耳を押へた。
「耳鳴りがしてゐるな。又近頃持病がすこし激しいのだよ」
「君にどんな話を語つたのだ?」
「親父がくるので暫く家へ帰れない、それは兄貴も承知だと言ふのだ。然し僕の部屋へ泊つたことは秘密にしてくれとゆふべのうちは言つてゐたのだ。僕はとにかく圧倒されたよ。なんのために僕の部屋へ泊る気持をもつたのかと考へてみたのだ。行く場所がなかつたためか? 僕に身体を許すつもりか? 正直なところ僕はそれを第一に頭の中でなんべんとなく反芻しつづけてゐたが、結局身体に指一本触る勇気も起きなかつたよ」
「そこを見抜いてゐたのではないか?」
「さうかな? 僕は然し……」
 長平は耳から両手を離さなかつた。
「僕の正直な感想を言ふと、あの人が僕を訪ねてきた気持はある程度まで娼婦的な、言ひ寄られたらどうなつても構はない気持が多分にあつたと思はずにゐられないのだ。勿論愈々こちらが言ひ寄る段になつたら、その時はその気持が又どう変つたか分りやしないよ。然しすくなくとも訪ねてきたときの気持は。……僕はその気配にひどく圧倒されたのだ。男、特に
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