点]に係はる感情が、決して自然のものでない愛や憎しみを強制する、その不自然とわづらはしさが不快なのだ。何者に成りたいか? と訊かれたら、先づ何よりも家庭を棄てる者になりたいと答へる気持を持ちだしてから、もう一昔の時が流れた。巣立つた鴉のやうに、古巣を離れてどこへでも飛び去つてはいけないのか? と言ふのではないのだ。巣を飛び去る行為は必ずしも難い筈のものではない。古巣を逃げる、然し又、新らしい巣を造つてしまへば同んなじことだ! 古巣を逃げだすといふ環境の突変によつて、古巣にからまる不自然な然し根強い感情を同時に一変せしめることができるものなら、多くの悲しみが私のまことに不甲斐ない日々から消え失せてくれるであらう。私は肉親、又家庭、それを直接言ひたいのではなかつた。古巣にからまる不得要領な歪曲された感情や行為の表出が、自然であるべき我々の全てのものを自然ならざるものとする、その苛立たしい暴力に就て言ひたいのだ。
家庭といふ言葉からいきなり私が思ひつくのは、安らかに――古風に言へば、畳の上で死ぬ場所だ、といふことだ。死といふこと、特に自然死といふこと、このことほど馴染みすぎて胸にひびかぬ言
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