搆サ象が起きはしないか? つまり視覚が耳朶に移るとか、聴覚が顎とか掌へ移るとか、嗅覚が足の裏へ転置するといふことなのだ。たとへば目隠しをしても手紙を読むとか、眼の前へ棒を突きつけてもあまり驚きもしないが耳朶に棒を近づけると急に威嚇されたやうに身を引いて『盲目になりますよ!』と叫んだり、同じことが嗅覚に就いても、たとへば、香水を鼻の下へもつていくが何の反応もない、足の裏へ香水をやると急速に反応を起して微笑し、鼻孔をふくらましてせはしく呼吸を早めるといふやうな現象が稀に起りはしなかつたのか? それ以来癲癇の発作が起きるやうなことはないか? それから趣味が突然一変したり思ひもよらぬものに熟練をみせるやうになつたといふ現象はないのか? たとへば非常に高級な音楽に感動するやうになつたとか? 突然乗馬とか庭球が非常に巧みになつたといふやうな現象だ。又睡眠が不規則になつて、あるときは二日も三日も熟睡するといふことはないか? それから、これも重大なことだが、金とか鉛とか鉄とかといふ金属に対して、特に鋭敏な神経的反応がありはしないか?」
「どうもそれもよく分らないが、とにかく物を透視することは確からしい
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