ヒ。常にさういふ能力があるといふわけでもないらしいが、たとへばひとつの亢奮状態におちこむと異常能力を発揮するらしいのだ。当らないこともあるらしいよ。千里眼の現象なぞは半分適中しないやうな状態ださうだよ」
「然しそれだけで充分だ! それは明確に Catalepsy といふ神経病の一つなのだ。日本語では一般に全身強直といふ訳名を用ひてゐるらしいが正確なことは分らない。見給へ。(彼は催眠術《ヒプノチズム》に関する分厚な文献を数冊探しだして我々の方へ持つてきた)ほらこの本をごらん。それから、この本もごらん。ヒプノチズムに関する限り先づ冒頭乃至は、とにかく本論にかかる前にみんな一様に一応ふれてゐるのがこの Catalepsy といふ症候に就いてぢやないか。つまりヒプノチズムを科学的に説明づけることは不可能であるが、然し Catalepsy なる神経病が存在することによつても、ヒプノチズムと人体との密接な関係を否定することはできないといふのだ。ことほど左様にこの症候は異常なものだ。勿論科学的に説明することのできないものだ。然し確かに在るものなのだ。十四五歳の少女の春情発動期に起るのが普通だが、稀に
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