急角度に転進して、氏自ら忽然古代史の奥底に没入し去ってしまった。
私は生きているのが面倒くさくなるのですよ。死んでから、人間がどうなるか、あなたは知っていますか、私は知らんです。妹(折葉さんのこと)にききましたら、多分眠っているときと同じだろうと言うのですが、私は眠ることもあんまり好きではないです。私は熟睡できないです。その代り、一日に十六時間ぐらい寝床にいます。本を読んだり寝たふりをしています。私は死のうと思ったことがありました。そのとき妹に相談して一緒に死のうと思ったです。けれども、妹に相談すれば、妹は必ず一緒に死ぬと答えるですから、私は慌ただしいことになるでしょう。多分私は妹にひかれて妹のあとからフラフラと死ぬような立場になるですから、みじめだと思ったです。そう思いながら妹の顔を見ましたが、眼は見ませんでしたが、鼻と唇を見たです。なぜなら、そのとき妹は横を向いていたからでした。妹の鼻の形は美しいですから。けれども整った美しさですから、唇のみずみずしさ妖しさに比べれば、永く注意を惹かなかったです。私は唇をみつめていました。あなたはこの世に無限の物を見たことがありますか。私は法隆寺
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