いが、面白い。
同情や、甘さも物分りが悪く、手前勝手に徹しているといいが、時々物分りのよいオバサンらしいところを見せられると、イヤらしくさせられる。いつも背を向けてクルリと振向いて歩いていたら、そして彼女の感傷自体も大いに物分りがわるく手前勝手にエゴイズムが一質していたら、おそらく、あざやかにめざましいだろう。妖婦の技巧などゝいうものが及びもつかぬエゴイズムの妖光を放つのではないかと思う。由起さんの素朴な、しかし、鮮やかな感性が最大限に効果を発揮するのは、その時であろう。
私が福田の考とアベコベなのは、ここである。
私は由起さんが物分りのいいオバサンになり、警視総監の笑遁の術にも、両手に大きな荷物を二つも持ったことがないからという立場を認めたら、下らない話だろうと思う。
むしろ、もっと物分りが悪くならなければいけない。今のところは、物分りのいいようなところが顔をだして、邪魔をしているのである。
芥川は「女房のカツレツは清潔だ」と云った。そういう半可通な清潔さが、由起さんのめざましい感性を濁らせている。
芥川自身、この半可通な清潔感から脱出できなかった人であり、しかし自ら
前へ
次へ
全4ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング