、それに気づき、傷いて、倒れた人でもあった。
 由起さんは、芥川にくらべれば、もっと本質的にエゴイストであり、物分りが悪い。トコトンまで物分りが悪くなり、エゴイストになるのが、彼女の大成する道であろう。トコトンまで手前勝手になり、冷酷、センチ、最も雑然たる妖光を発散するがいい。
 今までのところ、由起さんの作品で私が一番好きなのは「脱走」で、手前勝手なところ、物分りの悪いところが、何より雑然と体をなしているからである。



底本:「坂口安吾全集 09」筑摩書房
   1998(平成10)年10月20日初版第1刷発行
底本の親本:「文学界 第二巻第三号」
   1950(昭和25)年3月1日発行
初出:「文学界 第二巻第三号」
   1950(昭和25)年3月1日発行
入力:tatsuki
校正:花田泰治郎
2006年4月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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