になっていたので、どこかで工面してきたのです。今度のは大仕事だから、と奴めハリキッていましたが、今までに比べればいくらか大仕事かは知れませんが、あの利口者の法本が日野を使う仕事だからタカが知れてるとぼくは軽くふんでいました。
 当日セラダは法本よりも先にウチへ到着したのです。表でヤケに自動車をブーブー鳴らす奴があるのです。二ツも鳴らせばわかるのに、三ツぐらいずつ五回も八回も鳴らすので、さては二世のセラダだなとぼくたちに判ったばかりでなく、鼻持ちならぬキザな野郎に相違ないと見当がついた次第です。
 そこで日野とぼくは帳場のノレンの隙間からこの人物を鑑定がてらのぞいて見ていたのですが、小柄でデップリした身体を重々しくノシノシと現したセラダは、出むかえの小夜子サンと出会いがしらに棒をのんだように動かなくなってしまったのです。
 ぼくらよくよく因業な借金とりにでもめぐり会った時でないとこうはなるまいと思いましたが、セラダは正直に口をアングリあけて小夜子サンに見とれました。
「アナ夕日本一美しいですね。ワンダフルです。ワタクシ世界中においてもアナタのような美しい人まだ見たことありません。ワタクシ
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