へ通う道に当っているから、一同は仕度をととのえて鎮守様の社の前に集り、また村中にふれをだして、
「オーイ。面ッ白《シ》ェことになるれ。みんな早う、来いや、来いや」
人々をよび集めて、鼻介の通りかかるのを今か今かと待っている。
鼻介が通りかかった。アンニャの総代が走って行って、
「オーイ。鼻介」
「何を云やアがる。唐変木め。口のきき方も知らねえ野郎だ。又、物は相談だが、じゃアあるめえな」
「アハハ。今日はチョッコリ仲間にはいって貰いてもんだが」
「バカヤロー。てめえ達の仲間にはいっていられるかい。こッちは忙《せわ》しいんだ。顔を洗って出直しやがれ」
「そういうワケには、いかねえな」
「なにが、いかねえ」
「オレがきいたところでは、ンナはたしか剣術を使うことが上手らという話らッたが」
「モタモタ云やアがるなア。日が暮れるぞ、ほんとに。剣術を使うが、どうした」
「ちょうどンナにいいことがあるて。ンナも知っているだろうが、十里四方にキッツイモンは誰かと云うと、みんなが四人の名をあげるな。鬼光、海坊主、米屋のアンニャ、それから飛作の四人の野郎だて。ンナには気の毒の話らが、ンナの名をあげる者は
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