ヨメに来るという話らてがんだネ。アネサもらえば若えアンニャの気持ではいけね。よそのアンニャと相撲とるのはもはや今後は堅くやめねばならねゾてがんだネエ。そんげのことで、オラ今度相撲とると、オトトとオカカに叱られねばならねがんだテ」
土俵の上よりも力がいるらしく、額と鼻の頭には汗の玉がジットリういている。百姓は理窟ぬきで役人を怖れる。長く悲しい歴史の然らしめる習性。身に覚えのあるアンニャの総代はゲラゲラ笑いたてて、
「オメ様に一ツくらすけられると熊れも狼れもダメになるほどのキッツイモンを、オトトもオカカもめッたに叱るわけにはいかねもんだわ。オラそんげに命知らずのオトトの話もオカカの話もきいたことがねえもんだ。そんげのオトトとオカカが居るがんだれば、オメ様の代りにオトトとオカカにきてもろて鼻介の野郎をくらすけてもろた方が話が早えわ。安心しなれて。あの野郎をくらすけても文句のでねような方法が、ここに一つあるがんだ」
そこで一同は額を集めて密議を重ねる。めでたく相談がまとまって、その晩は前祝いに充分のんで、一同アンニャの総代のウチに泊りこむ。
さて、翌朝になった。この村は鼻介がオトキの妾宅
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