土地の言葉でいッちキッツイモンである。
そこで有志のアンニャから丁重な使者が差しむけられ、四人の豪傑に集ってもらった。ナマズ、ドジョウ、タニシ、雀、芋、大根、人参、ゴボウなどとタダの物を持ちより二の膳つきの大ブルマイ。
「話というのは外でもねえが、オメ様方をいッちキッツイモンと見こんで、ここに一ツの頼みがあるてもんだて。鼻介の野郎を一発くらすけてやらねば十里四方には男が居ねというもんだが、さて、あの野郎もタダ者ではねえな。オレが睨んだところでは、生き馬の目の玉をぬくてガンが、あの野郎のことらね。オッカネ野郎さ。さア、そこで、オメ様方に腕をかしてもらわねばならねてもんだが、ここに困ったことには、あの野郎も十手をあずかる人間のハシクレであってみれば、ただくらすけるワケにもいかねてもんだ」
十手ときくとグッと胸につかえたドブロクを飲み下して何でもないらしい顔で静かに目をとじた鬼光。
やがて、もっともらしく目を光らせて、
「オラトコのオトトとオカカの話によれば、ンナもいつまでも相撲ばッかとッて居られねぞ。アネサもろて身かためねばダメらてがんで、なんでも来月ごろにはよそのアネサがオラトコの
前へ
次へ
全26ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング