ぶんそう感じたであろう。アネサは自分の両手がフワッと左右にひらき、両の股も左右にひらき、左右にひらいたまま手足ははなれて勝手にとんで行ったように思った。つまりダイナマイトにヘソをやられて、手足がとんでいったのである。しかし、ダイナマイトではなかったから、同じように感じはしたが、手も足もバラバラにならずにくッついていたし、くッついていたから、中空の四方にとびちる手足にひきずられて、アネサの胴体は、二十六貫のものをそッくりくッつけたまま、あッけなく、五六間ケシとんでいたのである。
地面へ落っこッて、身体がクルクルまわったと思ったのは、アネサの目がまわっただけだった。アネサは五六間ケシとんだ場所へ、気を失って、ぶッ倒れて、全然うごかなかったのである。
ミコサマのナギナタの手錬は驚くべきものであったのである。しかし、庄屋と馬吉のオカカには、それがハッキリのみこめなかった。ミコサマのナギナタが手もとでクルッと廻って流れて、何かチョッとなんでもないようなことがあっただけだ。アネサがバカのようにスッとんだだけのことであった。
「なんたる手錬。なんたる気合。その静かなること林の如く、動起って雷光も
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