をきった。そして空をきったとさとって、シマッタと思った時に、アネサの厚い胸は物凄い力で地面にむかって衝突していた。何かの力がそうさせたのだ。そしてそれは、アネサが空をきって横に泳いだ時、背後の方から、首か背か尻のあたりのどこかへ何かの力が加ってそうなったのであるが、アネサにはそれがハッキリわからないのだ。
アネサは棒を遠くとばして、大地へ四ツン這いにめりこんでいた。一瞬気を失ったが、すぐ正気に戻った。アネサの胸は岩のようなものだ。一度や二度、気を失ったぐらいで、どうなるというようなチャチな構造ではないのである。第一、必殺の闘志は、それぐらいで、失われやしない。
アネサは起き上ると、クワをとって、ふりかぶった。先方は遊んでいるようだった。そう見えた。斬ってくると思ったナギナタの刃がそうではなくて、その行手にサッと心の奪われた時、アネサは斬られず、その石突きで突きあげられて、五六間もケシ飛んでいた。
ナギナタの柄の尻の方で突かれるということと、ダイナマイトがヘソのあたりでバクハツしたことと、まるで同じような結果になるものであるらしい。アネサがダイナマイトでヘソのあたりをやられると、た
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