との釣合い。それは何を斬り、何をふり廻す要領にも通じているものだ。
 アネサはチャンと心得ているのだ。アネサは棒の握りが外れないようにギザギザを入れて仕掛を施しているばかりでなく、棒の先に鉄をはめて、自分の一振りに最適の速さ重さのかかるような仕掛も施しているのだ。
 アネサは決してクワや斧を握るように棒を握ったり、それと同じように棒を構えてはいなかった。その棒にふさわしく、然るべく構えている。上からふり下すのではない。それは外れることが多い。アネサは水平にふり払うツモリなのだ。しかし水平に構えているわけではない。ちょうど野球のバットぐらいの角度に、肩からふり下しふり払うツモリなのである。その構えは、野球の選手のようにスマートである筈はないが、決して力点が狂ったりハズしたりはしていない。それどころか、必殺の気魄がこもり、その一撃のきまるところ、結果は歴々として、あまりの怖しさに身の毛がよだつようであった。
 アネサの必殺の気魄に応じて、静々と現れたミコサマであったが、響きに応ずる自然の構え、一瞬にして応戦の気魄は移っている。全然両者無言のうちに、すでに戦いは始っているのだ。
 ミコサマは
前へ 次へ
全31ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング