をぶち破ってあたけはじめたら、家老と侍が取り抑えてくれる約束であった。
翌朝になった。
まだ真ッ暗のうちから、家老は庄屋の案内でホコラの前の物蔭に隠れていた。そこへ馬吉のオカカが血相変えて駈けつけたが、家老を見るとホッとして、
「オラ、ほんに安心したれね。あのネボスケのアネサが今日は暗いうちに起きたもんだ。マサカと思うていたがんだがね。オラ、ビックリして、オトトもキンカの野郎も叩き起しているヒマがありましねがんだ。別の道からアネサの一足先に報らせに飛んで来ましたがんだろも、アネサは本気に殺す気られね。太ッてえ樫の棒られねエ。あんげのもんで、アネサの力でしャぎつけられて見なれや。虎れも熊れも狼れもダメらてば。オラ、胸がまらドキドキして、どうしていいがんだか分らねわ。たのむれね。アネサ、今、来ますれね。なんにしても、ほんにオッカナげな太ッてえ棒らわ」
と云っているうちに、夜がだんだん白んできた。
アネサが現れた。なるほど太くて長い樫の棒を担いでいるが、まさかの用意か、クワも一本ぶらさげている。ちゃんと野良ごしらえ、手甲にキャハン。ハチマキまでキリリとしめている。殺気満々たるものがあ
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