でもないインネンをつけられて弱った。
「お母さんはそんなこと言わなかったわよ」
「この野郎ゥ」
「あなた、そんなこと、誰から聞いたの? 誰がそんなこと言ったのよ」
「この野郎ゥ。よウし言わねな」
 キンカ野郎のアネサは歯をバリバリかんで口惜しがった。しかし分別深げに、ジックリとうちうなずいて、
「ようし。わかった。ンナ、どうしても、ミコサマの位を盗もてがんだな。ンナがその気らば、オレもカンベンしね。ンナ、ミコサマになろてがだば、ナギナタできるろ。そうらろが。できねばならねもんだろが。ンナがミコサマの位盗もてがんだば、ンナはオレにナギナタの試合して勝たねばならんど。ンナ、オレを打ち殺さねば、ミコサマにはなれねわ。オレの目玉の黒いうちは、ンナ、ミコサマになれねど。あしたの朝、まら皆んなの起きね時、オレがここへナギナタ持って来るすけ、ンナもナギナタ持ってこい。ンナが勝つか、オレが勝つか。どッちか一人は死なねばならんど。ンナがミコサマの位盗もてがんだば、オレを殺さねばなれねがんだ。わかったか」
 とうとう二人は明朝太陽の登る時刻に、ホコラの前でナギナタの果し合いをすることになった。
 馬吉のオ
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