の見違げえだッたと言うだろが。ミコサマが舞うている時目エつけたのはキンカの野郎のアネサのがんだわ。その時ンナがアネサの横に居たがんだ。ミコサマが一舞いクルリと振向いた時、ンナがアネサの前にのさばって出て居たろが。そらすけ、ミコサマが取りまちがえてしもうたがんだわ。ミコサマはンナに言うたろが。ンナことをアンニャのヨメにもろうたのは、かえすがえすもオレのマチゲエであった。ンナとキンカの野郎のアネサは入れ代らねばならね。ンナはミコサマにはなれねえジャベであるから、キンカの野郎のアネサにたのんで来てもろえ。この村にジャベは一パイ居るけれども、ミコサマたるべきジャベはあのアネサのほかには居ねがんだ。そう言うたろが。オレが死んだら、ンナはキンカの野郎のアネサのとこへ行かねばならぬ。そうして、キンカの野郎のアネサに来てもろてミコサマになってもろて、ンナはその代りにキンカの野郎のアネサにしてもろえばええがんだ。そう言うたろが。ンナそれ聞いていたねッか。この野郎。ンナ、どういうわけでキンカの野郎のアネサのとこへ行かねがんだ。コラ。どうら。キンカの野郎のアネサと云うがんはオレのことらわ」
 ミコサマはとん
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