のところへ、ヨメも大ぐらい、中風病人が大ぐらいである。中風はよく食うという話であるが、キリもなく食いたがる。カメは怒って、
「この女は化け物だ。毎日ねていて、こんなに食うのは、大蛇の化けた奴だろう。あれぐらい大食いはないということだ。もう、なんにも食わすな」
病人は立腹して、
「実の母をとらえて、大蛇の化け物などと云うと、バチが当るぞ」
「大蛇の化け物がずるいもんだということは、オレがきいて知っているから、だまされないぞ。しかし、大蛇の化け物が中風で動けないのは、よかったわい。そうでないと、ねているヒマにペロッとのまれるとこだった」
それから食物をなめるぐらいしか与えないので、病人はまもなく死んでしまった。
一人へってもカメの空腹はみたされない。食物の不平マンマンであるが、女房に頭が上らないから、
「このコクツブシめ! 腹いっぱい食べたかったら、もっとゼニもらってこい」
こう怒鳴られると、いばるわけにいかない。
「もっとゼニくれる人って、誰だ?」
「バカヤロー。お前がもっと働けば、誰でもゼニをよけいくれるわ」
「もっと働けというのはムリだ」
「どこがムリだ」
「ムニャ/\」
「
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