の分も働いていたが、毎日パチンコの損がかさんでキリがないので、誰もよい顔をしなくなった。彼の家も終戦このかた農村の不景気風に貯えというものはなくなって、余分にお金のある身分ではない。そこで長男が一家を代表して助六に説教して、
「オレだって今度のことは残念でたまらないし、お父さんが可哀そうだと思っているが、我々若い者の目から見ればお父さんが犯人でないのは判りきっているのだ。しかし、今度の騒ぎは我々にとっては村の年寄どもの茶番劇のようにしか思われないから、みんながお父さんに同情はしているが、バカバカしくッて、口だししたくもないのさ。しかし、若い者の同情も、お父さんがあんまりダラシなくパチンコにこッているから、ちかごろではだんだん軽蔑に変っているよ。だから、そろそろマジメに働きなさい。村の若い者はみんなお父さんの味方なんだ」
助六は濁った目を光らせた。
「味方がなんだ。同情なんて、クソくらえだ。オレの身代をオレがパチンコでつぶすのが悪いか。軽蔑したけりゃ勝手に軽蔑するがいいや」
「パチンコしたいのはお父さんばかりじゃないよ。村の若い者はみんなパチンコしたがっているが、それを我慢して働いてる
前へ
次へ
全19ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング