中に運んで寒風にさらしてカンテンとする。海からとれた植物の名は何かと云えば、これをテングサという。このテングサを海からとる者はフシギにもこれが漁師ではなくて、それはアマという女である……」
 大混乱のうちにすでに結論はついていて、助六は犯人ということに定まっていた。かように大河の流れるような強力な結論に対しては小なる個人の抗弁の余地はありッこない。敵には農学博士どころか理学者もおればまた天眼通や何が現れるか見当がつかないのである。
 助六は悲憤の涙をのんでわが家へ帰り、その晩からどッと発熱して寝こんでしまった。

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 平吉の提案で村の有志が会合した。席上、平吉は沈痛な面持で立上り、
「杉の木も高熱を発して寝こんだそうであるが、自業自得とは云いながら、まことに気の毒なことである。彼を罰するには情に於て忍びがたいところであるが、彼がそもそもかかる悲運におちいって高熱を発するに至ったのも、即ちひとえにウスとキネを村内に持ちこんだがために祖先の霊のタタルところとなったがためである。即ち彼のウスとキネを焼却することは、祖先の霊をなぐさめて村の安泰をはかるためばかりではなく
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