にヨメがあることを知っておりましたね。ですが、行方不明になったはずの加十の捜査願いが見当りませんでしたね。しかしヨメさんが健在なら心配している筈でしょう。で、今度はそのヨメさんの居所を突きとめ、加十の側から見た事実が平作たちの側からの物とズレの有る無しを確かめる方法はあるまいかと考えたのです。するとまず何よりも早く思いだすのはお直の言葉で、つまり加十には勘当後にできた特徴が一ツだけあるということですね。ところが女中たちの記憶によると加十その人らしい天狗はいつもトンビをきて黙って坐ってる以外には特徴らしいものの印象がないと云うのですね。着たり脱いだりするトンビは特徴にはなりません。また、今まで発見されたバラバラの死体にも特別に目立った特徴というものはないのです。特徴と申せば、身体に附属した何かでしょうが、もしも身体に特徴があるとすれば、今まで発見のものに見当らないから、それはまだ発見されない部分にある筈です。あるいはまた、室内でもトンビをきていつも黙りこくっているという女中の言葉から唖という特徴も考えられなくはないのですが、他にその特徴を暗示したり証明の助けとなる何かが見当らないようです
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