から、これは一応除外しておきましょう。さて身体の一部に特徴ありとすれば、それはまだ発見されていない両眼か右耳か鼻か左手のヒジと手クビの部分か左のテノヒラか右スネでしょう。ところが右耳と鼻は顔にそぎ落されたアトがあるから、一応そこについてた物はあった。畸形の物にしても、とにかく一応ついていた。次に右スネは上の太モモと下の足クビ以下が発見されてるから、マンナカのスネだけ無かった筈はない。そこにイレズミとか傷アトぐらいは考えられるが、お直の目にわかる特徴だからたぶん着物の下に隠れる種類のものではありますまいね。すると、本来存在しなかったかも知れないものは両眼と、左手のヒジから先の指までの部分です。成人後の両眼失明なら遠路の一人歩きはできそうもないから、片目の失明とか義眼ぐらいは考えられるかも知れない。ちょッとした目立つ特徴と申せばいろいろと考えられますよ。ですが、ここで、この事件の特殊な性格と申すべきバラバラということを考えていただきたいのです。片眼の失明や耳や鼻の畸形や怪我を隠す程度のことに、関節という関節の全部にわたって一々こまかく切断する必要があるでしょうか。クビ、肩、ヒジ、手クビ、モ
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