いから、さらに三つかみのタケノコを女中の前カケに入れてやって、わが家へと戻った。
楠は結論した。
「殺されたバラバラの主はトンビの男。実は勘当された長男加十だ。さて殺したのは誰だか、いよいよ、それが問題だ」
犯人は誰かと考えても、彼が知り得たことだけでは考えの進めようがないし、然らば次の調査をと思ってみると、これ以上は独力で調査の進めようもない。これからの捜査は正式に警察権を用いてでないと進められない。
彼はこれまでの調査の次第を整理して、報告書をつくって、清書した。素人の文章で、この大事件を整理して推論の結論を立てる手際のむずかしさは思いのほかで、残った三日の休みをタップリこれに費して、休みの明けた日、これを上司に提出した。
ところが、ちょうどこの日、久しく現れなかったバラバラの一部が新規に発見されて、今回の包みからは左のスネと左の耳がでた。
すでに三度目の包みからそうだったが、楠がオヤと思って、ここに何かがあるかと思ったバラバラ包みのマゼ方、左右対照、マンナカの脱落、それは今やハッキリと彼の早合点で、ナンセンスな軽率にすぎなかった。それでくさッているところへヌッと現れた老
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