のさ。平作は学問ギライで、イヤがる加十をデッチなみに家業の手伝いをさせた。するとぐれて身を持ちくずして勘当となったが、弟の石松は今年二十六、人の話では二十三四からぐれたそうだ。オレが鬼のウチから出たころ二十ぐらいの生意気な小倅だったが、まだ身持ちがわるくはなかった。石松は兄に反して学問ギライ、遊び好き、芸ごとが好きで、唄三味線踊りを習い、寄席や芝居へ通うのが日課だ。平作は兄でこりてるから、石松には好きなようにやらせておいたが、芸ごとに凝って身を入れるぐらいのことは放蕩にくらべれば雲泥の安あがり、それに見た目には表面の風俗が似ているから、かえって他人の放蕩なんぞ羨しがりもせぬような行い澄した遊び人ができ易いように世間では考えられているなア。それも一理はあるが、根はめいめいの人柄によることだ。石松はぐれるにはオクテだったが、ぐれだすと始末のつかない奴で、齢をくッてるからいったんぐれると加十の比ではない。相続してからの約束で、鬼の子がよその鬼から借りてる金はお前さんの兄貴の証文にあるようなのとは二ケタぐらい違うようだな。オレのところへ金策に来たこともあるが、オレはそれ、この霊感の人相判断。ジ
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