れをつげた。

          ★

 さてその足で久五郎ハマ子の侘び住居を訪れた。世捨人だから言うまでもなく日記もつけていないし、俗事について多く語ることも好まない。何をきいても手応えがなくて手こずった。小花から聞き得た限りの共同の生活中の出来事をたよりにこんなことが有りましたねときくと、そう、そんなこともあったようだ、たしかに、というような返答ぶり。
「いつぞや周信さんたちが凄い剣幕で家探しに現れたそうですが」
「そうでしたッけなア。そう。そうでしたなア。明朝大工とトビをつれてきて天井もハメもネダもひッぺがして人間の尻の穴も改めてやるから待ってろなんて、あの時は、私たちふるえあがりましたっけ」
「それはいつごろのことでしたか」
「さア、春さきの陽気になりかけたころ、三月か四月ごろかなア」
「小花さんの失踪後ですね」
「そうだね。小花はそのときは居りません。なぜってお互の尻の穴を心配し合ったのはたしかに私たち夫婦二人だけ。ほかにお尻がなかったんだねえ。ところが案じたほどのこともありませんでした」
「お尻の穴は無事でしたね」
「いえ、周信ほどの悪党が堅く約束しておきながら現れなかっ
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