の支払いも要求できないどころか、二十万ドルの罰金まで取られることになっては、完全に破産であった。
どうあがいても、破産以外に辿る方法がなかったのである。
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あとで聞いたところでは、ペルメルは生糸商人泣かせの札つきの悪者だったそうだ。日本の生糸商人のずるいのと相対的に、外国の生糸商人も悪いのが多かった。生糸貿易にかけては素人のフリをして、期限ぎれや、わざと粗悪品をつかまされるように仕向けて、契約違反で訴えて、品物はタダ取りの罰金はモウカルというモトデいらずの商法の大家が多かったのである。ペルメルもその一人だが、あるいは多門と組んでいたのではないかと考えられた。
ここに、おどろいたのは小沼男爵であった。むろん多門が久五郎を一パイはめてモウケルことは心得て、少からぬ割前をとって、多門を久五郎に紹介してやったのだ。多門の最初の利益十四万円の半分ぐらいの割前はとっていた。
しかし、久五郎が破産する結果になろうとは考えていない。チヂミ屋は彼の生活を保証する銀行みたいなものだから、これに破産されては元も子もなくなる。
小沼男爵の考えでは、さし当って多門がもうけ、つ
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