実はダイヤだけでも二十万や三十万以下ではないのです。なんしろ百カラット以下では有り得ないダイヤだというのですから、品質によっては五十万以上、もっと高額を望めます。百万円以上ですらも有りうるのです。ですが、それを見た人々は主として全く宝石の知識のない百姓たちが、全部でした。その人々は五万円におどろいただけで、仏像自体の真価は知りませんでしたが、一人の村人だけが真価を感づいたのでしょう。そして役場に保管されていた宝石づきの仏像だけがいつの間にか盗まれていたのです。ケンギは仏像の盗まれた二三日前から行方をくらましていた役場の小使の一色又六にかかったのです。そして彼は数日後横浜で捕われたのですが、すでに彼は盗品の仏像を所持しておりませんでした。彼の申立てによると、外国人に売ったというのです。ですが、売った金も持っていません。それを追求されると、実はだまされて、まきあげられたと主張しました。そして、だました外人が誰だか分らないと云うのです。世間ではそれを信用しませんでした。どこかへ埋めて隠しておいたのだろうと思ったのです。そして彼は三年だかの刑に服しました。そして特に関心をもった人々はこう考えて
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