穴のない石室はさらに時代が古いものと考えられていたのです。ところがそのタテ穴の古墳から仏具がでた。しかもです。奈良の古寺でもまったく見ることのできないようなトビキリの仏象がでてきました。古墳の主が朝夕拝んでいた持仏でしょうが一尺五寸ぐらいの半跏像ですが、観音様だか何仏だか、ちょッと風変りで素性の知りかねるものであったそうです。黄金の仏像ですが、両手をヒザにそろえて一ツの玉を持っていました。この玉が古墳の中へ人々がふみこんだとき、ピカピカと閃光を放って燃えているように見えたそうです。まさに人々の目を射たのです。この玉だけは黄金ではなく、無色透明なものでした。そして専門家が出張して鑑定の結果、黄金は二十二金。ほぼ純金ですね。無色透明で閃光を放つ玉はダイヤモンド。一見して百カラット以下のダイヤではなかったのです。西洋の物好きな富豪がそれを一見して五万円で買いたいと村の役場へかけあいに来たそうです。発掘品の価値が大きすぎて学界の問題になったから、村の一存で売買ができません。五万円という驚くべき大金を涙をのんでみすみす見逃さなければなりませんでした。けれども、もしもダイヤの品質がよいものならば、
前へ
次へ
全55ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング