穴を掘らせる手段であった。そこで定助を殺すために。しかし、定助が古墳の中で穴を掘るには定助がそれを納得するだけの理由がなければならない筈です。そこはオーカミイナリの子孫が自分の祖神のミササギであると称している聖地です。もしもそのミササギの穴の下から一ツでも盗まれた金箱が出たとすれば、それによって本当の犯人の一生は泰平無事を約束される結果になるかも知れません。たぶん定助はそう信じて穴を掘りつつあったのではありますまいか。盗みにでかける時の定助は野良着に着かえて出かけるような人目にたつことはしませんでしたが、その日に限って野良着などを着て出たのは、いつ誰が埋めたか分る筈のない金箱を埋めるのだから、その日という日附が後日に至って重大になるとは考えられなかったせいでしょう。彼は野良着で悠々と出て行きました。往復六里の野良道を歩くのには、夜とは云え、野良着の方が人の怪しみをうけないという考えもあってのことかも知れません。土蔵破りに相棒があったとすれば、彼を殺したのもその相棒にきまっています。なぜなら彼は穴を掘りつつある時に殺されたが、埋めるべき何物もそこに置き残されていなかった。彼の相棒ではない
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