思いついたのだろう。加治さんの先例をきいたからだろうか」
新十郎がフシギそうにこう訊くと、彼もフシギそうな顔附をして、
「そう云えば、ここへくると珍しがられないということをどうして思いついたかフシギだねえ。だが、オレの立場になった人は誰だって里に住むのがイヤになるね」
「他国へ働きにでることを考えてみなかったかね」
「考えたことは大ありさ。だが、その前にちょッとここを見物したいと思って来てみたら、住みつくようになってしまっただけさ」
「なるほど。それなら、よく分るよ。ここへ見物に来た時は、ここの神主が父を殺したと考えていたのだろうね」
「それほどのことは考えていないよ。だが、小さい時から父を殺したという神様にはなんとなく興味があったね。一度は見物に行ってみたいと思っていたね」
「思いきって見物にでかけるとは何かワケがあったのかね」
「なアに。オフクロが死んだからさ。一人ぽっちになったから、自分の思うことが勝手にできるようになったせいだけだね」
「なるほど。一々よくうなずけるね。お父さんが亡くなったとき、お前さんはいくつだったね」
「十二ですよ。小さな子供ではないから、その時のことは覚
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