物を置いて行きます。よその小屋では金メッキのお守りや、金メッキのお面や福の神や金山の神や、いろいろ造っております」
なるほどこの小屋には木版の手刷り道具や出来あがったお札やお守りがあった。
「このお札やお守りはここへ来た人でなければ手に入らぬものでしょうね」
「来た人から貰いうける場合のほかは手に入らぬでしょう」
「参詣人は太駄の山里では年に四五十人見かける程度だと申しましたが、その小数の参詣人であなた方の生計が立つのですか」
「峯から峯を伝ってくる人、そして、里の人には姿を見せない参詣人が多いのですよ。我々に多分に喜捨してくれるのは、むしろ概ねこの人々です。日中はあまり姿を見せません。暗くなるころ到着して、明け方には立ち去ってしまうのです」
「天狗のような神主さんはいつもここに居るでしょうか。時には旅にでるでしょうか」
「日中は仕事場で必ず神の矢を造っております。神の矢を造る期間は仕事場に姿のない日はありませんね」
「いまはずッと矢を造る期間ですか」
「左様です。年の暮から翌年の十月までは神の矢をつくる期間です。その期間の日中には必ず仕事場に姿を見ることができます」
「夜間は?」
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