ん、身から離すことを非常に怖れる気持が強いに相違ないが、しかし、目アキの気附かない隠し場所に確信があれば……」
新十郎は呟いたが、微笑して云った。
「もしも私たちの来訪に怖気づいて捨てたのでなければ、たぶん身につけているのではないでしょうか。古田さん。角平のカラダをしらべてごらんなさい」
角平は慌てて色を失った。古田と花廼屋がとり押えたが、必死の抵抗は目アキとちがってキリがないほど凄まじいものだった。
着ているものの一番下に、シッカと肌につけた札束の包みが現れた。角平は巡査によって引き立てられてしまった。
新十郎は語った。
「この犯人はほかの物には手をふれずにまッすぐにタタミとネダをあげて壺をだしているのですから、そこに壺のあることを知る機会に恵まれた者にきまっていますが、またメクラでなければならない理由があったのです。オカネの寝床と一しょにアンドンも片隅へ寄せられていました。アンドンをつけて物を探す必要のない犯人だったからでしょう。しかも、ネダはタタミ一枚分そッくりあげてありました。光と目を利用することができる人なら、こんなムダをする必要はありません。また縁の下から取りだした
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