ことだ。しかし、先生も話せるなア。虎にしちゃアできたことを言うじゃないか、とおいでなすッたぜ。アッハッハ。居ながらにして全てタナゴコロをさすが如し、それに比べると、あの若僧のフーテン病みは……」
新十郎一行はアンマ宿の前で馬のクツワを押えていた。虎之介は馬から降りずに、
「こんなところに立っていたって仕様がないぜ。石田屋へ行かなくちゃア、ラチがあかないよ」
新十郎は笑って答えた。
「仁助は朝早く足利へたちましたよ」
「シマッタ! 一足おくれたか。それ、足利へ。オレに、つづけ」
「お主は馬よりも泡をふくねえ。馬をのせて足利へ走るツモリだな」
と、花廼屋が虎之介をからかった。
そこへ古田巡査の案内で到着した警官の一行。一同そろってアンマ宿へはいった。
主人銀一、養女お志乃、弟子が三名。オカネの妹オラクとその子松之助が来合わせていた。
せまい部屋に一同が着席すると、新十郎は家族の者を見まわした。メクラ一同オモチャの鳩のように無表情でハリアイがないことおびただしい。
「全てのことを推理したいと思ったのですが、一ツのことは今もって見当がつかない。メクラは、盗んだ物をどこに隠すか。たぶ
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