どうしてこう出来損いが集りやがったのだろう」
 と、まずオカネがことごとく気に入った。そしてこのムコ話がだんだん具体化しつつあった。
 三人の弟子のアンマはよそのトンビに油揚をさらわれそうになったので驚いたが、お志乃と松之助はもッと困った。なぜなら、お志乃と松之助は良い仲になっていたからである。
 松之助の背後には母親がついている。母親がアイビキの指図をして、二人に智慧をつけているから、さすがのオカネも銀一もまだこのことには気がつかないが、松之助よりもむしろお志乃が熱くなっていた。
「メクラと一しょになるなんて、思ッてもゾッとするよ。ねえ、松さん。どうしたら、よかろうねえ」
「なんとか、ならねえか」
「なんとか、しておくれよ」
 と三ツの目玉を見合わせても、この二人には良い智慧が浮かぶ見込みもない。
 この晩も、旦那のところを早目に切りあげたお志乃が松之助とアイビキ中にジャンときた。火が消えてから二手に分れて、二人は何食わぬ顔、松之助の奴は、
「ヘイ、火事見舞いでござい」
 と図々しく、ついでに義理を果して、オヤ御苦労さん。おそいから、泊っておいで、と寝床をしいてもらい、奴めアイビキで
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