内の空間には彼の人の姿は全く実在いたしません。ただ、そのとき室内はちょッとだけ小さくなっていました。つまり押し開けられた扉を壁の代りに、左右の隅に独立してしまった二ツの三角形の分量だけ。そして二ツの小さな三角形はもはや棺桶を安置した部屋の一部ではなかったのです。すくなくともこのダビ所の場合に於てはそうでした。扉を左右に押しあければ誰しも部屋の全部が開放されたと思います。そして、押し開けられた扉によって区切られた左右二隅の小さな三角形の中の屍体と人間は、すでに隠れたのではなかった。つまりそこはすでにその部屋の一部ではなくなっていたのです。だから、すでにその部屋に存在した屍体も人もなく、隠れている屍体も人もなかったのです。あッけないほどカンタンで、そのために完全でした」
火消人足の中に大きな息をもらす者が二三あった。それにつれてヤマ甚も大息をホッともらして、
「フーム。そうでしたかい。実に、どうも、ありがとうございました。私を男と見こんでこの秘密をあかして下さった以上、ただもう山キが成仏するように、冥福を祈ることだけしか考えますまい。お前たちも、ただもう山キの冥福を祈ることに精を入れて余
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