にそなえる用意は必要だなア。そこにヌカリのあるコマ五郎ではないはずだ。するてえと、どういうことになるのです。私の目で見たところでは、コマ五郎の輩下の者が、中に死人は居らぬ筈だと思いこんでいたことは確かだと思いますが」
「そこなんです。どうして死人がでる筈はないと思いこんだのでしょうか」
「山キはたしかに棺桶にはいりましたなア。私は式のはじまる前に、あんまり立派な木を用いた棺桶だから、見せてもらったが、底に仕掛のあるような棺桶じゃアありませんでしたよ。山キはたしかにその中にねましたね。そしてそこから出るヒマがないうちに棺桶は担ぎだされたのですから、どうしてもヌケ道の用意がなくちゃア出られない」
「どうしてもヌケ道がなければ出られないときまっていますか」
「すると、ヌケ道がなくとも出られると仰有るのですか」
「そう。出られないかも知れません。しかしヌケ道というものは、決して空間の通路とは限らないのですよ。通路とちがったヌケ道から出てくる予定だったかも知れません」
「通路でないヌケ道から出る方法がありますか」
「あります」
「失礼だが、あの建物と同じようなものを造って、床にも羽目板にも扉にも
前へ
次へ
全69ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング