すからロッテナム夫人の莫大な家賃は、実はこの寝室の借り賃なのかも知れません。ですが彼女が術をうけなかったというのはマチガイかも知れませんね。彼女は一般の手術室で他の貴婦人と同様な術はうけませんでしたが、自分ひとりのための寝室の中へ、皆さんの美人術に用いるものの何倍もあるような手術用の寝台を持ちこんで、それを自分だけで使用していた形跡はあったと留守番の老人は申しているのです。ですから、他の人々がうけた施術は玉の肌を荒す目的の美人術でしたが、彼女のうけた施術だけはホンモノの美人術で、彼女の推賞には秘密の真実を白状している本音も含まれているのかも知れません」
「もしもそれが事実でしたら、大伴夫人はさらに益々美しくなる貴重な女神を失ったようなものではございませんか。そして仰有ることが事実ならば、ロッテナム夫人を手放しは致しますまい」
「たしかにそうですわ。あなたは忽ち主要な点にお気づきになるフシギな方ですわね。すると彼女の手術も他の方のと同じようにやっぱり利き目がなかったのでしょう。ですが、他の貴婦人の何倍もある手術用の寝台を使っていたというのですから、慾が深いのね」
 そのとき外出先から戻っ
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