あったという発見が、三の謎の秘密を解いているとは、いかなる意味によってであるか。黒ん坊の三本指がいかなる理由や力によって兄上の幻想を支配するに至ったか。この方程式をとくのは困難な仕事のようだが、謎のカギがこの方程式の中に必ず実在していることはすでに確信できるだろう。あなたのマゴコロと、その心の位置の正しさによって、あなたの直観が神のように秘密の真相に迫っていることを僕は信頼できるのだ」
そこで通太郎は一室に閉じこもったり、克子とともに論じあったりして、一途にこの不可解な三本指の方程式の解明にかかりきったが、いかにして黒ん坊の三本指が宗久の幻想を支配するに至るかは全く雲をつかむのと同じことでしかなかった。
「そうだ。僕が自分の手でいくらいじってみても答をひきだすことはできまい。きくところによれば、結城新十郎という人は紳士探偵と評判のように、名利にうとく、ただ正義を愛するために犯罪を解く人であるという。若年ながら古今東西の学に通じ、推理の天才であるというから、この人に判断をたのむことにしよう。あなたも同道して、見聞の総てを直接物語って判断を仰ぐことにしよう」
こう約束して新十郎の住所を
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