たような直覚がないかと云えば、ロッテナム美人館の扉ボーイの指が三本だったという発見がある。あなたはその発見が三の謎をとく神のお告げと見たい気持をもっている。分身の直覚は当然すぎるために思いだせないほどであったが、三本指の方は思いだせないどころか神のお告げと見たいほど曰くありげに思われていつも心にかかっている。一見二ツはアベコベのようだけれども三の数の謎をとく神のお告げと見たいほど曰くありげに思われるということは、実は前者と同じように平凡で当然な真理であると確信したいこと、否、すでに確信していることの証明だ。あんまり当然で思いだせないのも、あんまり当然な真実を衝いているためにいつも気にかかっているのも、結局同じ根から出て一見アベコベをさしているにすぎない。あなたは三の謎をとく大切なカギを握っていながらその自覚を忘れていたから、その自覚を与えるために神のはかりたもうたカラクリが、分身の直覚を忘れるという出来事であったのかも知れぬ」
そこで通太郎は生き生きと結論を叫んだ。
「さア、我々はこの困難な仕事に自信をもってとりかからなければならないぞ。ロッテナム美人館の黒ん坊の扉ボーイの指が三本で
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