オタツはすでに捕えられて留置されていた。腕の立つ猛者を十名もさしむけてオタツを捕えたそうだが、それでも甚だ難儀な立廻りであったという。
犯人はオタツであった。ナガレ目は無関係であったし、カモ七もオタツの犯行を全然知らなかったのである。新十郎は語った。
「オタツとガマ六はその晩炭焼小屋で一夜をあかしましたが、ガマ六の大金を見てムラムラと殺意を起し、重い棒か何かでガマ六の後から頭を一撃して、殺したのです。一撃によって頭がくだけて、目がとびだすという強襲でした。それをコモ包みにして山小屋へ運び、畑の物と一しょに下の家へ運び下して、いったん自宅へおき、夜行列車の通る直前に線路へすててきました。また、花房がくるのを知ると炭小屋で待ちぶせていて、二人で一夜をあかし、翌朝花房をねじふせて、ナワか何かで後手にいましめてコモで包み、谷へ運んで牛の角をめがけて花房を上へふりかぶって投げおろした。牛がおどろいて、角をぬくと、もう一度花房を突きあげて自分のナワをきって盲メッポウ走りだしたのでしょう。花房は牛の角につかれるまで生きていたのです。花房をねじふせてコモにつつむとき、抵抗に対してちょッと手荒にやった
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