ぬ存ぜぬ、もう二年間あの小屋へ行ったことがないと主張してゆずらなかった。
 菅谷はガッカリして、ひきあげた。そして、上京して新十郎に報告した。新十郎は慰め顔に、
「ガッカリなさることはありませんとも。いろいろのことが分ったではありませんか。特に、ガマ六や雨坊主の魔法の代用品が分ったのは何よりですよ。おまけに、古い炭小屋の存在まで分った。ナガレ目が白状しないのは問題ではないのです。たしかに着流しで裏山へ登った人々はその炭小屋をめざしていたのでしょう。あなたはすでに事件を解いているのですよ。たッた一ツ、いろいろのことを結び合わせるもの、結び目が足りないです。その結び目は炭焼小屋の近くか、小田原か、どこかになければならない。しかし、それが分らなくとも、すでに事件は解かれております」
 きいていた菅谷も花廼屋《はなのや》も虎之介もアッとおどろいた。特に菅谷は冷汗を流して、
「どうも私には分りません。ガマ六の屍体をムシロにつつんで夜に入るのを見すまして汽車の線路へ持って行くには、ただ歩いても一時間半、二時間ちかくかかりましょう。まして重い屍体を運ぶなどとは人間業ではありません。怪力無双のオタツだ
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