、ほかに小屋をつくる材料が豊富にあってのことか、小屋を残す必要があってのことだ。小屋の中をあけてみると、二畳もない小屋の中にムシロがしかれ、片隅に余分のムシロをまいたものがつまれているだけで他に何もないが、ふと隅を見るとちょッと気のつかぬ暗がりにキセル入れの筒とタバコ入れがある。手にとると、非常に高価な品のようだ。金の模様の銀ギセルがそッくり入れたままだ。筒に名が彫られておって、大内とある。それはガマ六の姓だ。つまれているムシロをどけてみると、別に何も隠されていない。荒ナワだのはき古したワラジなどが何足かすててあっただけだ。いずれも炭焼きの用いたムシロであるから炭だらけだが、その黒いのをよく見ると、黒いのは炭のせいだけではない。どうも古い血のようだ。菅谷はおどろいて、ムシロを一枚一枚ひろげてみた。しかれているムシロの上の方の三ツのタバはキレイだが、他の二枚はボロボロで、その黒いのは血のようであった。荒ナワにも血のしみついたのがあった。
菅谷はそッと元通りにしてタバコ道具と血のムシロとナワだけ持ち帰ったが、その翌日ナガレ目を訪ねた。しかし、いくら問いつめようと試みてもムダであった。知ら
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