カモ七は肥をあびた上に膝小僧をどうかして数日寝こんでいるのだ。
そこで改めてクサレ目にも注意を与え、カモ七が寝こんだほどだから、何か詫びのシルシに品物を贈って見舞わせ、それで手を打たせたことがあったのである。
これを思いだしているうちに、菅谷はハッと気がついた。これは、どうも、くさいぞ。オタツとカモ七の執念深さというものは大変なものだ。クサレ目にイヤガラセをした時だって、いつも石が的を外れたからよいが、命中すれば人を殺していたのだ。
ガマ六と雨坊主がオタツやカモ七に憎まれ殺される理由があるかどうか調べたことはないが、何か理由があれば、これはテッキリ奴らが犯人だ。なぜなら、ガマ六が汽車にひかれた場所はオタツらの小屋に一番ちかいし、クサレ目のアルバイトを知っているのは、どうやら被害者のほかにはオタツだけではないか。亭主のカモ七もその辺の深いことは多くを知らないらしく、クサレ目が生きているうちは安心ができないと謎のようなことを云っている。ノータリンがこう云うのだから深刻だし、こう云わせる相手の男もノータリン。ここには深いシサイがあるらしい、と考えた。
そこでガマ六と雨坊主を旅行におび
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