きだしたのは誰か。彼らとオタツとカモ七にツナガリがあったかどうか、それを調べることに決心した。
★
菅谷は再びお客のフリをしてガマ六の遊女屋に登楼して例の女の客となった。
「ここも花房の湯も旦那方が御直々にサガミ女をさがして歩いていたそうだが、この店にもサガミ女がいるのかい」
「お多福で相すみませんが、私もサガミの女ですよ。鶴巻温泉からずッと山の奥へはいった方でとれたんです」
「じゃア、ガマ六旦那に掘りだされたわけだな」
「いいえ、私はゼゲンに目をつけられてここへ来るようになったんです。ゼゲンと云ったって、本職は炭焼だかキコリをしているウスノロじみた小男ですが、山から山を猿のように渡って歩く妙な早業があって、山奥の村を歩いて女を見て歩くのが人生のタノシミなんだそうですよ。猿の生れぞこないか、山男のように誰の目にも立たないから、この男に目をつけられているのを知りやしませんよ。旦那は主にこの男からきいて女を買ってくるのです。この山男は女を見て歩くのが道楽だから、口銭がタダのように安いせいもあるんでしょうよ」
「その小男は耳が大きいのだね」
「いいえ。耳は当り前です
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