たが、オタツに組み伏せられてシマ蛇で手足とクビをしばられてからは、オタツの目がさめていては勝てないと知って寝ているときに忍びこんだが、オタツのイビキが大きいので、ビックリして逃げだすところをオタツのオヤジに捕われ、クサレ目をオタツにうつすためだと分ったから、馬のクソを一ツ食えば帰してやると言われ、食べることはできないから甜《な》めるだけでカンベンしてくれとたのんで、甜めて帰してもらいました。そのときから、クサレ目はオタツにクサレ目をうつすことと馬のクソを食わせることをやりとげるまで生きねばならんと考えてワラ人形の目にクサレ目をぬり口に馬のクソをつめて釘ヅケにしました」
 話がどこまでつづくか分らないから、タンテイはもうタクサンだと云う代りにカモ七の口を両手で押えつけた。彼は手足をバタつかせたが、同じことを三度くりかえしてやられるまでは、タンテイが手を放すたび演説をつづけはじめたのである。
 菅谷巡査はカモ七の女房思いの心情にホロリとさせられたのである。浮かない顔で帰路をたどるカモ七をなぐさめて、
「人殺しというわけじゃないからな。たかが人の山の木を伐っただけだ。徳川時代とちがって、木を
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