寝たあとを示しているし、吐いた汚物の下には他人の所有を示す署名の本がある。一応足跡をふいたり、寝床の一ツを押入れへ片づけたりしていますけれども、実際は誰かが前夜一時的に宿泊したことが明白で、それが一応かくされたように見せかけてあるのは、実は一そう誰かの宿泊ということに疑惑が深く差し向けられるように仕向けられたものだと解してよろしいでしょう。ここに事件全体の暗示があったのです。足跡をふいたらしい物が発見されないということは、それが隠されたことを意味し、したがって、他にもどこかに隠された何かが有りうると語ってもいますね。他に何が隠されたと想像しうるか。それは云うまでもなく三枝子さんの屍体ですよ。犯人は家で飲むためにと貧乏徳利に酒をつめてブラ下げたが、家ではのまずに、家にすぐ近いエンマ堂で、当然雨がふりかかるのをかまわずに酒をのんでいます。それはカミナリが更に荒々しくなる時をまつ必要があってのことです。三人のカミナリ病人が有って無き存在となる時をまつ必要もあったし、大雷鳴を利用する必要もありましたろう。その大雷鳴を待ちつつも、もしも時田さんの酔いがさめかけたなら更に酒をのませて正気を失わせる
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