ました。私はかの予言を思いだしていました。彼の希望の如くに対面を許してやるとあざむいて、真ッ暗な屋内へひきいれ、座敷牢へ押しこめて錠をおろしました。そこまでは予言の如くやりとげましたが、火を放つ勇気はなかったのです。私は混乱しつつ大殿さまのもとに走って、木々彦を座敷牢にとじこめたことを報告しました。私が言うべくして隠していた心事は大殿さまにイナズマの如くに閃いたのかも知れません。大殿さまはよろしいと申されて何のためらいもなくお立上りになると、ただちに別館へ赴かれ、アッと思うひまもなく火をかけて、お前は帰れ、何事も人に語るな、と言いすてて雨戸をとざしてしまわれたのです。それからのことは御承知の如くであります。蛇足として、すべては身に定った運命であると再び申し添えておきましょう。それが生きてきたすべてでもあり、死に行くすべてでもあります。

          ★

 海舟は虎之介の持参した英信の遺書を一読した。読み終えて、虎之介に手紙を返した。海舟の顔には安らかな色が現れていた。
「運命というものは、在るような、また、ないような、あまり当《あて》にはならないものだ。つらつら悲劇のもとをも
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